「ニートのあした」宣言

プロフィール

ニートはジャズ - 作品集


ニートは、強制労働社会に請求書を おくりつけます。 しごとを わけてやるから、カネを わけろ!

プロレタリアは死んでいる、ニートよ永遠に!

  • ずる休みを理解すれば経済が理解できる

 ずる休みという現象をりかいするのは ひじょうにむずしい。もし、ずる休みを りかいしたならば、そのとき わたしたちはすべてを りかいしたことになる。しかしそのためには まずずる休みをあまりにかたよった視点からみたり、せまい意味でとらえたりしないで、すくなくとも宇宙全体に関わらせないといけない。ニート問題は、ニート問題以外のすべてをふくんでいる。そしてこの問題は、特権的な視点を提供している。ニートは下にいるからだ。そして全体は、下からし見えない。
 これについては、踏まれているがわの痛みは踏んでいる側にはわからないという言い方がある。野坂昭如は踏んでいるがわの気持ちは踏まれている側にはわからないと返した。うまい。けれど、気持ちの問題じゃない。

  • 世界経済危機と戦争

 世界経済が危機におちいってから、しばらくがたつ。そのことと、戦争が終わらなくなったことには関係がある。危機は、たんなる循環的な変動ではなく、資本主義の果ての果てである。その先はニートにしかわからない。このあらたな局面をひかえて、「自由な」賃金労働者は姿を消した。
 この変化をたどってみよう。中曽根康弘は臨教審に指導をあおいだ。まず電電公社を、国鉄を、郵便局を、治療した。次に、そのほかのすべてを治療した。規制を緩和し、自由をくばりまくった。資本はますます自由にふるまうようになった。ってことは、高いお金を出して日本人の健常者男性を雇わなくても、おなじことをべつの「あまっている」人たちにやらせれば安上がりだ。差別や抑圧がはびこる領域に移動して、女子どもに縫わせれば、おなじフリースもほとんど原価タダみたいなもの。合理化、リストラ、解雇、つまりクビ。かくして、賃労働は女性化された。女性化されたものは安くなる。しかし安くなってしまったら、もっと安くしないと追いつかない。

 自由、平等、兄弟愛へ。さようなら。

  • 混乱

 資本主義が発達したら、それにつれてプロレタリア化が進むかというと、そんなことはない。*1むしろ非プロレタリア労働力をいかに維持するか、つくりだすか、それが資本の課題である。戦争や差別は、そのためにある。
 ニート問題に解決策はない。
 マルクスの言ってたとおりだ。

  • そもそもプロレタリアは少数派だった / 非正規がむしろふつう

 一部の地域の大人、日本人か白人、男性、健常者、都市在住、老いていない。これだけしばりをかけたら、少ないはず。
 すでに人間として認められているものだけにしぼっても、世界人口の9割方はその条件を満たしていない。このものたちは賃労働をやっていることもあるが、たいがいは非正規である。たとえば、パートタイム労働、請負労働、季節労働、移民労働、不法就労、派遣労働。労働なのになぜか賃金が出ない労働。家事とか、学校に行くこととか、入院することとか、看病とか、友情とか恋愛とか。

  • 資本主義って?

 資本主義はヨーロッパに始まった。それが徐々に拡大し、やがて世界をおおいつくし、よくする。と思ったらおおまちがい。
 「自由な」労働力をつくるために、暴力が必要だったということは、みんなが認めている。魔女狩りとか、征服とか、今さら否定する人なんていない。
 けれども、その暴力は一回こっきりのものではなく、ずっとつづいている。いまでもふつうに。わたしたちの自由はあいもかわらず ほかの人々の不自由を養分としている。わたしたちの自称非暴力は、実質的には暴力のアウトソーシングでしかない。わたしたちの民主主義は ほかの場所での独裁にたよっている。っていうか、を、つくっている。
 というわけで、教科書にのっているような資本主義生産様式は例外だ。それ以外は、前資本主義的生産様式、ポスト資本主義的生産様式、ないし非資本主義的生産様式か、あるいは周辺資本主義的生産様式なんだよ。このような例外以外のあり方が原始的に見えたり未開発に見えたりファシズムに見えたり全体主義に見えたりするとしたら? そしてそのような諸条件で生活する人々が、愚かに、怠け者に、暴力的に、陰険に、病んでいるように、見えるとしたら? それは視点が間違っているしるしだ。
 ふと目を離したすきに、包摂ということばを良い意味で使うことが流行している。ニートをいかに就労させるかとか、教育するかとか。ニートにしないように育てるとか。ニート予防。それでもニートになっちゃったらどうするかとか。
 これらのことは、ニートをいかに人間にするかということを課題としている。わたしが思うに、人間を人間にしようというのはあまりにも失礼だし、おかしい。人間を人間あつかいしてないからだ。
 資本主義は、単体でゴロッとあるものではない。資本主義は資本主義でないものともちつもたれつ。それが一つの全体だ。そして、それは下からしか見えない。そこにいるのがニートだ。

 わたしが言いたいのは、ニートの労働が第三世界の労働とよく似ているということだ。
 資本主義が誕生してからというもの、「自由な」賃金労働者の全人口に占める割合は増えていない。そしてそのことは、資本主義が失敗しているということを意味しない。むしろ、資本主義というのはそういうものなのだ。非正規労働者やバカやきちがいや子どもや女や有色人種やニート。こういった連中こそが資本主義の蓄積と成長の基盤である。彼らは、人間のモデルからすると例外だ。けれどもその例外が同時に標準である。さらに、この状況はいまやプロレタリアに脅威さえ与えている。というのも、あらゆる異議申し立ての声とはうらはらに、資本主義のもと、不自由に、友もなく、暴力にとりかこまれ、みじめに、抑圧され、権利もなく、組織をもたず、賃金は安いわ財産はないわ、安心もなく、ひもじくさむく、しかしそれでも働いてるから。「失業者」が働いていないというのは、現実には誤っている。彼らは賃金や収入がない場合、生きのびるために「被雇用者」よりもはるかに多く働かねばならない。彼らは最低限の収入を得るためにできることならなんでもやらなければならない。一つの仕事の稼ぎがあまりにも少ないので、同時にいくつかの仕事をしなければならない。彼らは、小農民であると同時に季節農業労働者であり、もの売りであると同時にサービス業の従事者であり、生産者であると同時に時価製品の売り手であり、娼婦であると同時にパートであり、請負労働者でありと同時に家内労働者である。
 資本主義は、ヨーロッパで始まったかのように見える。そして徐々に拡大し、未開発地域を開発していく。けれども実際の順序は逆だ。すくなくとも同時に逆。開発が未開発をもたらす。資本主義は常にニート化と共にあった。その方向性が見えやすい形でよく見えたのが、第三世界というものだった。けど、いま、第三世界でない場所はない。東京も、ロンドンも、どこだって第三世界だ。ヨーロッパは女性化され、周辺化され、自然化され、主婦化され、ニート化された。目を背けたくなるものがあるとしたら、自画像だ。けれども断言できることがある。プロレタリア化されることは、ない。それが順序だからだ。

  • プロレタリアの対立物としてのニート

[とてもたいせつなセクションです。ここさえきちっとおさえておけば、すべてが整合性を獲得するという。けど、疲れてきたので省略します。ごめん。]

  • 国際分業のモデル

[ここも省略。イリイチ偉大。]

  • 分割する「理由」

[本当に疲れたので読みもせずに省略。柳澤大臣、実はフェミニズムの勉強をしまくってた疑惑。そのほか、ものすごく重要なことが書かれてます。前半で気合いを入れすぎて、かんじんなところが読めなくなったことについて、歴史に謝る。トリアージを実行していればよかったです。]

  • 展望

[第一段落:とてもたいせつなことが書かれています。]


[第二段落:「「ニートのあした」宣言」がパクられている。ありがとう。]


 こうして変化が始まっている。これは、あらたな、異なる資本主義の始まりや、まして社会主義の始まりを告げているものではない。これが告げているのは、完全に論理一貫した、現存システムの延長であり、その潜在的な性質のもやは粉飾されない姿のあらわれである。平等や自由というものは、戦時経済にとっては、そうしたことを許容するそぶりを見せることもできないような贅沢品なのである。
 第三世界の都市や農村におけるいわゆる世界市場労働や請負生産は西洋世界における将来の全長を提示している。すなわち、工場でのパートタイムの不自由な賃労働、軍隊、奴隷制、家父長制的な核家族という詩的監獄に基づいたあらゆること、つまり、性別分業は、自由な賃労働が廃絶されたあとも生き残り、さらに強くなるだろう。
 わたしたちすべて、男性も女性もが、一挙に、賃金だけでなく、それ以上のもの、つまり生産手段(わたしたちの身体、住居、土地、知識、想像力その他もろもろ)を獲得することに成功した時にのみ、本当の分岐点が出現する。わたしたちは、これらすべてを、自分人身(自律的な存在)のために働くことができるように、「中央権力」に操り人形のごとく依存し続けることなしに獲得したい。しかし、そのためにはプロレタリアだけではなくニートもまた不必要なものにしなければならない。



[最後の一文での「不必要」についてはイミフ。だれか教えてください。]


原文:古田睦美「プロレタリアは死んだ、主婦万歳! クラウディア・フォン・ヴェールホフ」(『世界システムと女性』)


↑アマゾンマーケットプレイスの相場ワロスw これを買える人は、プロレタリアでも女性でもニートでもないかも。

*1:かといってゴールドソープもまちがい。